こんばんは、渡邉です。

今週の翻訳カフェのスピーカーは山田先生でした。山田先生に語っていただくのは第3回以来です。

HT(人手翻訳)、TM(翻訳メモリ)、Rev(チェック)とPE(ポストエディット)について、様々な研究を踏まえて考える回となりました。

まず、PE に必要なスキルは、HT に必要なスキルと(正確性を修正するという観点からは)ほぼ同等である、または多くのスキルが重なり合うということを前提にトークが始まりました。

業界における現状を概観した後、機械翻訳やPEにかかわる最新の研究をたくさん紹介していただきました。

お話に何度か登場したのがこちらの論集です。

ご紹介いただいた研究の中でひとつ、Over-edit(過修正)についてのものがありました(上の論集に含まれます)。Over-edit とは、ポストエディターやチェッカーが正確性を上げるための修正ではなく、自分の好みに合わせた修正を行うことを指します。

Nitzke and Gros (2021) は実証実験を行い、機械翻訳をポストエディターが修正した場合と、翻訳された文書をチェッカーが見直した場合のOver-edit の割合を算出しました。

Over-edit の割合はLexicon、Syntax、Style、Addition、Deletion……などに細分化されて算出されていましたが、特にLexicon とStyle のOver-edit が顕著に表れていました。

ポストエディットの場合は全修正箇所のうち30%~50%がOver-edit と判断されました。そしてチェッカーが見直す場合、つまりrevision task では69%がOver-editと判断されました(詳しい研究手法や割合については文献をご参照ください)。

この結果から、山田先生は「チェッカーのOver-edit はこれまでどう対処されてきたのか、そもそもチェッカーの教育はどのように施されているのかという問題提起ができる」とおっしゃっていました。

他にも興味深い研究をたくさんご紹介いただきました。最新の研究、そしてそこから考えられる課題や今後の動向について、ご興味おありの方はぜひ、メンバーペイにご登録の上アーカイブ動画をご覧ください!

Q&Aセッションでは、翻訳周辺で発生する仕事について、今よりも詳細な定義や基準が必要であることや、翻訳者/チェッカー/ポストエディターが、自分の好みに合わせて修正をする傾向は今後教育体系が整っても変わらない可能性があることが話題に上りました。

また、山田先生からご紹介いただいた研究結果を肌で感じたことがあると教えてくださった方もいました。

ここからは個人的な感想になりますが、私は実務の経験がまだほとんどないので、話を聞くまで私にとってその結果は真新しいものでした。信頼のおける手法と数値をもって現象を記述してくれる研究者さんたちのおかげで、私のような駆け出し翻訳者でも業界のことを学ぶことができてありがたいなぁと思いました。

配信の終盤で、山田先生から「翻訳にかかわるすべての仕事にリスペクトを払うべき」というような言葉がありましたが、今回の配信は、個人的には翻訳研究者の方々へのリスペクトを実感した回となりました。

個人的な感想になってしまい、失礼しました💦

次回の配信は……

次回は通訳者として多様にご活躍されており、また現在神戸市外国語大学の大学院にて通訳理論を学ばれている大西亮平さんにお越しいただきます。

翻訳カフェとしては初めての通訳者ゲストです!

告知記事は週末あたりに公開する予定ですので、ぜひTwitter をフォローしてお待ちください。

みなさまの奮ってのご参加、お待ちしております!