こんにちは、岡村です。

第21回配信では、第20回に引き続き、中澤敏明さんにお越しいただきました。
今回も山田先生との対談形式で、機械翻訳の評価や使い方について詳しくお話してくださいました。中澤さん、ご参加いただいた皆さま、ありがとうございました!

機械翻訳の仕組みや自然言語処理については前回の配信でご説明いただきましたので、ご興味おありの方は、ぜひアーカイブでご確認ください!

機械翻訳の評価と発展

まず、機械翻訳の評価についてのお話から始まりました。現在よく使われる評価指標として、BLEUスコアがあがっていましたが、これは正解とされる訳にどれだけ近いかを自動評価した指標です。この値が人手評価の結果と異なる可能性は否めないそうですが、開発者は1日に何度も評価するため、手軽に扱えるBLEUスコアが重宝されているとのことでした。

ちなみに、山田先生は機械翻訳をテーマに博士論文を書かれていますが、評価にはGTMという指標を用いておられます。その値から人間翻訳者が下訳として使っても良いと考える閾値を探ることも視野に入れていたそうです。詳しくは、論文を読んでみてください!(論文はこちら:http://apple-eye.com/rikkyo/YAMADA_2011.pdf

次に、これから機械翻訳はどのような発展を遂げるかという質問に対し、文脈を考慮するようになるだろうとお答えいただきました。ここでの文脈とは、言語学やコミュニケーションにおける状況や背景知識などの意味を持つ”context”ではなく、前の文を参照するという意味の”co-text”のことを指しています。文脈考慮ができる機械翻訳の代表は、何かと話題のDeepLだそうです。ただ、最近では開発が進み、Google翻訳でも文脈を反映させられるようになってきているとのことでした。

このように機械翻訳の精度が上がるにつれ、世間の人々の機会翻訳に対する関心も高まっていくと考えられます。つまり、社会で使用される機会が増えていくということです。その時に重要なことは、適切な機械翻訳の使い方や発注の仕方を伝えることだとお話しされていました。

ディスカッション

機械翻訳の使用の仕方はお客様次第の部分があるというご意見をいただきました。案件の緊急度や予算など、テクスト以外の問題が機械翻訳の活用に影響することを強く認識する必要があるという話になりました。そのような研究はなかなか価値を認めてもらえず、発展しにくいといった面もあるようですが…。

さらに、ポストエディットが必要かどうかという判断が曖昧で難しいというご意見もあがりましたが、これは翻訳者とクライアントの間に立つ翻訳会社が判断すべきだとのことでした。ただ、翻訳会社側も機械翻訳についての理解が十分ではないこともあるため、適切に判断するのは難しいだろうとおっしゃっていました。

総じて、教育が重要だという話になりました。以前の配信でも、教育して資格を与えることの意義についてのお話が何度もあがりました。これまでは翻訳者になるというテーマで語られることが多かったですが、今回はプロジェクトマネジャーなど翻訳という実務をしない人でも、管理・指示する立場における資格を準備する必要性を認識した回となりました。

翻訳は様々な要素が複雑に関わり合っているため、どこかの一面だけ、例えば、翻訳者教育だけを整えても意味が無く、多面的に、つまりは翻訳に関わる人のそれぞれの立場における教育を行うことが今後の翻訳を持続可能にする一つの方法なのかもしれないと感じました。

今回もいろいろな側面からご意見をくださり、改めてご参加いただいた皆さまに感謝いたします。次回も様々なご意見をお伺いできることを楽しみにしております!
意見を言うのはちょっとプレッシャーだな…という方もご参加いただくだけで、私たちの大きな励みとなりますので、お気軽にご参加くださると嬉しいです☺️


山田先生が配信中に触れていた「リンギストについて語った」動画はこちらです!
リンギストということばの専門家とは何か、どうすればなれるのかといったことが楽しく学べます。ぜひこちらもご覧ください☺︎