第35回配信では、ウダーニ・バーラスーリヤさんにお越しいただき、ご自身の母語であるシンハラ語について教えていただきました。また、ウダーニさんの研究テーマである日本語の擬音語・擬態語の翻訳についても語っていただきました。

貴重なお話をしてくださったウダーニさん、ありがとうございました!
ご参加くださった皆さまも積極的にご意見くださりありがとうございました!

シンハラ語とは?

まずは、シンハラ語の基本情報からご説明いただきました。

シンハラ語はスリランカで話されている言語の一つです。というのも、スリランカは多民族国家のため、公用語としてシンハラ語タミル語の2種類が話されています。シンハラ語を話すのはシンハラ人で、スリランカでは多数派の民族だそうです。一方で、タミル語を話すのはタミル人とムスリム人だとのことでした。

また、スリランカでは、共通語として英語も話されており、イギリスの植民地だったという歴史的背景から法律などは英語で書かれたままのものもあるとおっしゃっていました。

シンハラ語と日本語

シンハラ語は意外にも日本語と共通点がいくつかあるようです。

まず、シンハラ語の基本的な語順はSOV(主語+目的語+動詞)で、日本語と同じだそうです。それだけでなく、助詞においても日本語と同じ役割を持つものが複数あるということです。例えば、日本語の「に」「から」「と」などに対応する助詞が存在するそうです。

反対に、日本語の文法要素にはシンハラ語に存在しないものもあります。日本語で言うところの「が」「を」「は」に対応するものは、シンハラ語には無いということでした。さらに、数詞にも違いがみられるそうで、これは単語単位の順番とも関連しています。以下のような違いがあるそうです。

日本語:数+単位(例)50円
シンハラ語:単位+数(例)ルピー50

日本語とシンハラ語は全く違う言語かと思いきや、もちろん違いもありますが、共通点もたくさんあるのですね!

擬音語・擬態語の翻訳

ウダーニさんは日本語の擬音語・擬態語がどのようにシンハラ語に翻訳されているのかということを研究なさっています。

シンハラ語には、日本語と同じように音で表現できるものがあります。例えば、日本語の「パチパチ(燃えるなど)」という表現は、シンハラ語でも “pachi pachi” のように音をそのまま表現できるそうです。

反対に、音をそのまま表現できないものもあります。例えば、「コロコロ(転がるなど)」という表現に対しては、シンハラ語にはコロコロにあたる言葉がないため、副詞を用いるなどして「連続して転がる様」を説明的に翻訳することが多いようです。

他にも具体例をいくつか共有してくださったので、アーカイブでご確認ください!

擬音語・擬態語を使用する上でのシンハラ語と日本語の大きな違いは、書き言葉と話し言葉という点に隠されているようです。日本語では書き言葉でも話し言葉でも擬音語・擬態語を使うことはできますが、シンハラ語は書き言葉で擬音語・擬態語を用いることはないということでした。このことから書き言葉と話し言葉の文法がかなり異なるというシンハラ語の特徴も見えてきました。

ディスカッション

ディスカッションでは、シンハラ語についての感想や日本語との類似点・相違点などを話し合っていただきました。シンハラ語やスリランカでの言語使用についての質疑応答もしてくださいました。

・複数言語が話されているスリランカでは、輸入品の表記は何語で書かれているのか?
 →基本的には英語で表記されている
・スリランカでの翻訳者の地位はどのようなものか?
 →複数言語が話されるため、翻訳の必要性が高く、翻訳者の地位も高い
・言語専門の省庁が設置されるほど言語に重きを置いている
・日本語以外の言語では「音=音楽」として聞いている一方で、日本語では「音=言語」として聞いているという説がある

シンハラ語については知らないことばかりで、非常に興味深いお話をたくさんお伺いすることができました。ご参加の皆さまも様々な質問をしてくださり、新たな知識を得ていただけたのではないかと思います。詳しくはぜひアーカイブをご覧ください!



次回は…

11/15 21:00~ 今回の配信のお話を基に、多言語社会について山田先生に語っていただきます!

詳しくは告知記事をご覧ください。

皆さまの奮ってのご参加をお待ちしております!