「翻訳者は憧れの職業なのか?」「あなたは翻訳者として憧れに値する仕事をしていますか?」

この問いは重要です。というのも、翻訳カフェでは「翻訳の未来」を意識したトークを実施しており、その1つの活動として、次世代の翻訳者をどう育てるかを考えてきました。これに対するアプローチの1つとして、翻訳者(という仕事)が、「憧れ」「なりたい職業」として、今の若者にどう見られているのか(見られるべきなのか?)ということも射程に入れて議論をしています。その目的のために、これまでにも多くの実務者(本翻訳カフェのサロンの会員の方々も含む)にゲストスピーカーとしてお話してもらいました。ということで、翻訳カフェでは、引き続きこのような観点から、実務者にも多くを語って頂きたいと考えています。
 その事始めとして、今回のカフェでは、会員が増えつつある参加者の経験をヒアリングしつつ、まずは主宰者の山田優の経験を多めに語って見ようかと考えております。しかしながら、自らを語ってしまうことは、「私の経験が、(若い世代に)憧れられるものとして映っているのか?」と、自虐的・自己批判的にならざるを得ず、語りすぎることはむしろ逆効果だとも考えています。が、そのような視点を折込みつつ、翻訳は憧れの職業なのか? すなわち、「あなたは翻訳者として憧れに値する仕事をしていますか?」という点から、問題を議論したいとおもいます。
これとは別に、シーズン3では「大人のための翻訳学」というバックグラウンドタスクを設定し、不特定の会では、先週(シーズン3・第9回)で試みたように「翻訳を語る概念(言葉)を整理する」ことを通して、翻訳者や翻訳会社等、翻訳に携わる方々の間での共通認識の確立を目指してきました。しかし先週(シーズン3・第9回)の議論で発覚したように、例えば、「ポストエディット」をめぐる問題や、それに付随する翻訳単価の下落の問題は、単に、人々が言葉の定義を誤って認識しているのではなく、その言葉の意味を理解しながらも、それらの言葉を乱用している可能性があることが露呈されました。つまり、業界の「営業」「運営」に携わる方々は、言葉の意味(定義)をわかってはいるのだけれども、そのとおりに運営できない「事情」があるのです。そして、翻訳者に近い現場側の人は、その「事情」を理解し、営業側の方々と理解を深める必要があることが再確認できたというわけです。このような背景を考慮し、翻訳カフェでは、7月から「翻訳会社側の事情」を語ってもらうための企画を準備して、業界内での理解を深めたいと考えています。