AI翻訳技術の飛躍的発展により、個人や小規模チームでも多言語出版が現実的な選択肢となりました。しかし、単にテキストをAIに投げ込むだけでは、品質も権利関係も不十分です。技術的な可能性と法的・倫理的な配慮、そして実務品質を両立させる体系的アプローチが求められています。

実践プロジェクトの始動 ー 鴨長明『方丈記』の多言語展開

今回のセッションでは、具体的な作品を題材に、原文準備から完成まで多言語出版の全工程を実践します。題材は鴨長明の『方丈記』。パブリックドメインの古典文学を、英語・中国語など主要言語へ展開する実践的プロジェクトを通じて、以下の4つのステップを体系的に学びます:

①原文の準備(リーガル&エシカル面での配慮)

国立国会図書館デジタルアーカイブからの取得、著作権状態の検証、AI翻訳に適した形への初期編集まで、プロジェクトの法的基盤を確立します。ChatGPT、Claude、Geminiの利用規約確認、現代語訳参照時の著作権処理など、見落としがちな権利関係を整理します。

②原文編集による品質向上(AI時代の逆転発想)

従来の「原文は不変、翻訳側で調整」という考え方を転換します。AIでテスト翻訳を実施し、問題箇所を特定した上で原文側を調整することで、翻訳品質を劇的に向上させる新しいアプローチを実践します。あいまいな代名詞の具体化、長文の分割、文脈情報の補足など、AI翻訳の精度を最大化する原文編集技術を習得します。

③LLMによる多言語翻訳(複数LLMの使い分け)

ChatGPT、Claude、Geminiなど複数のLLMを特性に応じて使い分けます。日本語の自然さに優れるChatGPT、長文処理能力に秀でたClaudeなど、各ツールの強みを活かした実践的翻訳戦略を構築します。正確性・流暢性・文体・文化的配慮の4つの評価基準に基づく品質管理手法も紹介します。

④プロンプト設計の最適化(AI時代の言語専門家の腕の見せ所)

最小限の指示から翻訳戦略の明示まで、5段階のプロンプトレベルを段階的に試行します。作品情報の追加、ジャンルと文体指示、文化的背景情報の提供、翻訳方針の明示化など、プロンプト設計の巧拙が翻訳品質を大きく左右することを実証的に示します。

現場主義と成果物の共有

このセッションは講義ではなく、実践プロジェクトの始動です。プロジェクトの成果物は順次公開し、多言語出版のケーススタディとして共有していきます。

古典文学の多言語展開に興味がある方、AI翻訳の実践的ワークフローを体系的に考えたい方、著作権や商用利用の法的ポイントを理解したい方、自身の翻訳プロジェクトに活かせる具体的手法を求めている方、ぜひご参加ください。この実践を通じて、AI時代の多言語出版の新しいモデルを一緒に作り上げていきましょう。