第27回からはシーズン2が始動し、会員の佐々木勇介さんにご自身の研究テーマ「医療通訳とテクノロジー」に関連したお話をしていただきました。配信終盤では、「プロセス」という視点からも議論を行いました。
改めまして、皆さま、こんにちは。
岡村です。
医療通訳とテクノロジーは昨今ではどんどん関心が高まってきているトピックだと思います。今だからこそ知っておくべきお話を共有してくださった佐々木さん、ご参加くださった皆さま、ありがとうございました。
医療通訳が抱える課題
まず、医療現場における通訳(医療通訳)に詳しくない方もおられるだろうということで、前提からお話しくださいました。
医療通訳というと、かなり専門性が高い分野であることは言わずもがなだと思います。それにも関わらず、実際に実務を行っているのは患者の家族やボランティア通訳者であるというのが現状だそうです。ここでは、医療通訳という専門職に対する社会的地位の低さも問題の一つとして挙げられるとおっしゃっていました。
さらに、現在では新型コロナウイルスの影響で生活様式に様々な規制がかかっていますが、医療通訳も例外ではありません。感染拡大を防ぐために、通訳者であっても患者さんと一緒に診察室に入ることは難しいそうです。これに伴い、遠隔通訳や機械翻訳(通訳機)の導入が進んでいるとのことでした。医療現場でもテクノロジーを駆使して通訳を行なっていく必要があるようです。ただ、医療現場においては人の気持ちなどのソフトな面への配慮も欠かせないので、人間通訳者とテクノロジーをどのように使い分けるのかということが課題だそうです。
このような背景から、佐々木さんは医療通訳の利用経験がある方々のお話を実際に伺いながら研究をされています。
今後の展開
インタビューや先行研究などから得られた知識を基に、医療通訳におけるテクノロジー使用の今後の展開について、お考えを共有していただきました。
特に機械翻訳(通訳機)に関しては、人間通訳者に取って代わるということはなく、人間通訳者のサポートをする存在になるだろうとのことでした。近年、機械翻訳(通訳機)は目覚ましい発展を遂げているため、その動向にも注目しながら研究を進めていかれるそうです。
ディスカッション
ディスカッションでは様々なご質問やご意見をいただきましたが、主に医療通訳が行われるプロセスについて考えることができました。
その中で、改めて「通訳が人間である必要性」について話し合いました。そこで、強調しておられたのは、物理的に人間がいることで得られる安心感が重要だということです。
というのも、通訳者が担う役割には、言葉を適切に伝えることだけでなく、その場のコミュニケーションを円滑に運ぶファシリテーション機能も含まれているからだそうです。
通訳を利用する患者さんの心身の状態を考えることは、テクノロジー使用について深く考えていく上で必要不可欠な要素のようです。ここでは、山田先生から医療通訳に関する論文「医療通訳の役割・多言語音声翻訳ツールに関する意識調査」を紹介していただきました。ご関心のある方はぜひご覧ください!
佐々木さんは研究には絶賛取り組み中とのことですが、生の声に基づいた研究結果はすごく貴重なものになると思います。またお話をお伺いできたら嬉しいですね。
改めて、貴重なお話をしてくださった佐々木さん、ありがとうございました。
また、ご参加の皆さまのご意見のおかげで有意義なディスカッションとなりました。
ありがとうございました。
他にも、なかなかお聞きできない研究にまつわるお話をたくさんしてくださったので、詳しくはアーカイブをご覧ください!
次回は…
次回は、9/20 21:00~です。次回も翻訳カフェの会員さんにお越しいただきます。
ゲストには、日下部優さんが二度目のご登壇をしてくださいます!
産業的な側面から翻訳評価のプロセスについて語ってくだいます。
詳しくはこちらの告知記事をご覧ください!
皆さまの奮ってのご参加お待ちしております。