次週に高橋 聡氏をゲストにお迎えするにあたり、今週は、一旦、そのための予習をします。

テーマは
『翻訳支援のパラドックス』再考~Chat GPTと翻訳(その2)

あるいは、「1秒でも長く「頭」を使いたい 翻訳者のための超時短パソコンスキル」とは何か~

過去に筆者は、JTFジャーナル(2020)の連載の最終回で
「翻訳支援(CAT)」について考え直したことがありました(pp. 26 – 27)。

https://webjournal.jtf.jp/wp-content/uploads/2021/02/JTFjournal310_2020Nov.pdf

その一部を以下に掲載します(全文は、上のリンクを参照)

CAT と は computer-assistedtranslationである。ここで哲学的にも本質的にも問題になるのは、CATという考え方の実現可能性、つまり翻訳をコンピュータに支援してもらうのは、どのくらい可能なのだろうか、という問いである。これについて井口耕二(2010)は、一貫して下記の線引きを主張する。

人間よりコンピューターにやらせたほうがいい部分

人間がやらなければならない部分 

この境界線について井口は、人間よりもコンピューターにやらせたほうがいいのは「頭よりも手が意味を持つ部分」であるとする。辞書引き、串刺し検索等の機能まで ならコンピュータにやらせたほうが良い。逆に、翻訳メモリは「手よ りも頭が意味を持つ部分」を浸食 するツールであり、短期的・長期的 に(翻訳)品質の低下をまねくおそ れがある、と述べる。つまり、CAT ツールは井口の定義では翻訳支援 に含まれない。

中略

しかし
Martin Kay は、いずれ計算機が「翻訳」 について(人間が)考える部分に 介入してくることを予言している。

人間が考える部分に、計算機が介入して始めたことは、対話型の大規模言語モデル(LLM)のChat GPTの出現で明らかになりました。プロンプトエンジニア≒説明可能な翻訳者 という図式をテーマに、今回の会合では、Chat GPTの実務翻訳への活用可能性・活用方法を真剣に論じたいと思います。