第31回配信では、引き続き「順送り」に迫っていきます。前回の補足に加えて、「本能的」で「芸術的」な順送り訳という概念について山田先生に語っていただきます。

配信の内容

先週の北村会員のトークを引き付け、今週も「順送り訳」について話します。

水野的先生が、2021年10月16日にJTF翻訳祭で「新しい翻訳文法:訳し上げから順送り訳へ」という講演をされることとも大いに関係し、翻訳カフェでも今月は「順送り訳」をテーマに扱っています。


翻訳の大きな問題である「高品質な翻訳」「翻訳調からの脱却」「日本語らしい訳」を達成するために、そのヒントとなる順送り訳という考え方。実は言葉というものを構成しているのは「正確性」に関わる「命題」の問題を扱う統語(文法=syntax)とは別に、「流暢性」に関わる部分の一つを構成する「情報構造」という文法が存在します。

これは、音声文法にも関係し、話し言葉では、消えていってしまう言葉の音を脳内で保持するための作動記憶容量の制約を受ける本能的・動物的な側面と関係する文法である。翻訳 vs. 通訳の対立構造で言えば、後者の通訳と大いに関係し、「英文訳読法」と「真の翻訳」という対立構造でいえば、後者になります。

「理性」と「本能」の対立で言えば、後者の「本能(言葉の身体性)」に関係する。「理屈」と「審美・芸術」の対立で言えば、後者に関係する。「理系」と「文系」の対立で言えば、後者に対応します。プラトン vs. アリストテレスの「普遍論争」で言えば、ひょっとすると、後者のアリストテレスの考え方と関係します。「順送り訳」という考え方は、これまで英語や外国語を、いわゆる前者的な「統語的な文法」でしか学ぶことができなかった人にとっては、とても新鮮な文法となりうる。俗な言い方をすれば、(翻訳調でない)こなれた日本語にするためのエッセンスとなりうる文法でもあります。


とういうことで、今週も順送り訳を論じます。尚、本テーマに則して、この先2週間も、順送り訳の研究者をゲストにお迎えして、お話を聞く予定です。


順送りという言葉を耳にしたことはあるという方は多いのではないでしょうか?
いざ一体どういうものかと聞かれると…答えるのは難しいですよね。
ただ、通訳翻訳においてかなり重要な概念であることも確かだと思います。

順送り訳や通訳翻訳に対する理解を一緒に深めてみませんか?

前回の北村さんのトークを聞きそびれてしまったという方は、ご参加に併せて、ぜひアーカイブをご覧いただくこともお勧めいたします!

皆さまの奮ってのご参加お待ちしています。

(文責:岡村)